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【手続情報:商標】商標審査基準の全面改訂
(2017/06/01)
 
 商標審査基準が大幅に改訂されました。平成29年4月1日から運用を開始しています。
 商標審査基準は昭和46年の初版発行以来、細かい一部改訂は繰り返してきたものの、近年は審査の実態に沿わない点が諸々見受けられるようになったため、近年の審査運用を明確化する形で今般の2年計画での全面改訂に至ったものです。

 特に今回の改訂箇所のうち主要なものや目新しいものを紹介します。
(1)商標の類否判断(外観・称呼・観念の類否、商品・役務の類否、結合商標の類否、取引の実情の考慮)について、改めて判断基準を例示・明確化すると共に、結合商標の結合性には観念上のつながりも影響すること等、近年の審査運用に沿った内容に修正されました。(※1)

(2)商標法第4条第1項第11号(先願先登録)において、出願人と引用商標権者に支配関係がある場合には、当該商標が登録を受けることについて引用商標権者が了承することで登録され得るという運用が新設されました。(※2)

(3)商標法第4条第1項第7号(公序良俗違反)において、他人の商標を先に出願したり公益的な施策に便乗して周知の歴史上の人物名を出願したりする、いわゆる悪意的な商標出願も該当し得ることが明記されました。(※3)

(4)いわゆる「精神拒絶」は、同一人が同一商標・同一指定商品等について出願した場合に限定することが明記されました。(※4)

(5)その他の条項についても、近時の裁判例の動向や審査運用をふまえ、対象となる標章の例示、類否判断基準の追加・修正、基準の趣旨の明確化等、全面的に見直されました。



脚注
(※1)
 例えば称呼の類似についての判断基準を示す例示において、改訂前の「スチッパー」と「スキッパー」等の従前例は多くが削除され、新たに「ダイラマックス」と「ダイナマックス」等の例が複数追加されました。
 従前例には現在の審査運用においては必ずしも類似とは判断されない例も含まれていたため、音数が比較的長い構成の中の一音相違であると共に類似と判断される可能性の高い母音・子音の組み合わせである新たな例に修正されたものです。
(※2)
 ハウスマークのような根幹部分に係る商標を親会社が持っている場合に、子会社が、当該ハウスマークを含んだペットマークの商標を取得したいケース等があると思われます。そのような場合に、従前はわざわざ親会社にペットマークの商標を取得してもらってから子会社にライセンスや権利移転の手続をとる必要がありましたが、今般の改訂によって親会社に了承を得ていれば子会社が直接出願・登録できることとなりました。
(※3)
 国内において先取り的な大量出願が行われていること、また国際的にも有名なブランドなどの商標が無関係な第三者により無断で商標出願・登録される、いわゆる「悪意の商標出願」の問題が世界各国で発生していること、等の背景もあります。
(※4)
 従前は、同一人が同一商標について指定商品が部分的に一致する出願をした場合、「商標法制定の趣旨に反する」というやや不明確とも言える理由で拒絶されるいわゆる「精神拒絶」という審査運用が存在しましたが、完全一致する場合を除いてこれが無くなりました。完全一致の場合の拒絶理由も「商標法第3条の趣旨に反する」というものになります。
 事業拡大に伴い、自己の所有する商標権に対して同一の商標の指定商品を拡大していきたい場合があると思われます。そのような場合に、従前は更新期限の異なる複数の商標をバラバラに取得していくことがありましたが、今般の改訂によってこれまでの指定商品と新たな指定商品をまとめて出願・登録することが可能となり、商標権管理の利便性が向上しました。


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