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【法改正情報:不正競争防止法】営業秘密の保護強化
(2016/05/20)
 
 平成28年1月1日に改正不正競争防止法が施行されました。近年、被害額が数百億円にも上る技術情報流出事件や3000万件の営業情報流出事件、国外犯による産業スパイ等、営業秘密漏えいに関する大型事案の顕在化・件数増加という背景を受け、営業秘密の保護を強化し、侵害の抑止を図ったものです。

 具体的には、刑事面において、営業秘密侵害罪の非親告罪化、罰金刑引き上げ、3次取得者以降の者への処罰範囲拡大、未遂犯や国外犯の処罰範囲拡大、民事面において、侵害者(被告)への立証責任の転換、等が行われました。(※1)

 つまり、営業秘密が侵害された場合に法的に訴え易く、かつ重罰化されました。又その一方で、加害者となってしまわないようコンプライアンスを徹底する必要性も高くなったと言えます。

 尚、社内の重要な技術情報・営業情報が法的な「営業秘密」として認められるためには、相応の秘密管理体制が必要です。それには経済産業省発行の「営業秘密管理指針」や「秘密情報の保護ハンドブック」が参考になります。(※2)



(注)
(※1)
 今般の改正内容の詳細は以下の通りです。
1. 刑事面
 以下のような改正によって、保護範囲が拡大されると共に罰則が強化されることにより、営業秘密侵害への抑止力の向上が期待されます。
(1)営業秘密侵害罪の非親告罪化
 営業秘密を侵害された被害者の告訴を待たずとも捜査を開始することが可能となりました。
(2)営業秘密侵害罪の罰金刑引き上げ
 罰金刑の上限が、個人:1000万円→2000万円、両罰規定による法人:3億円→5億円へと引き上げられました。
 又、海外で使用する目的で営業秘密を不正取得した場合等には、新たに海外重罰として個人:3000万円、法人:10億円の罰金が科されることとなりました。
 更に、営業秘密侵害罪により生じた犯罪収益を、裁判所の判断により没収することができる規定が導入されました。
(3)営業秘密侵害罪の処罰範囲の拡大
 これまでは最初の不正開示者から開示を受けた者(2次取得者)までが処罰対象でしたが、そのような2次取得者から不正開示を受けた者(3次取得者以降の者)の不正使用・不正開示行為も処罰対象に追加されました。
 尚、民事では元々そのような3次取得者の不正使用・不正開示行為も営業秘密の侵害とされていましたので、刑事を民事に揃えた形になります。
 又、他人の営業秘密の不正使用等だけでなく、その不正使用によって生産された製品の譲渡や輸出入等の行為も禁止されることとなりました。尚、この侵害品の譲渡等の規制は、刑事・民事共に新たに追加されたものです。
(4)未遂犯、国外犯の処罰範囲の拡大
 営業秘密の不正取得や不正開示等の未遂行為も処罰対象に追加されました。
 又、海外での営業秘密の横領行為等(国外犯)も処罰対象として明確化されました。
2. 民事面
 以下のような改正によって、法的に訴え易くなることにより、民事救済の実効性の向上が期待されます。
(1)損害賠償請求等の容易化(原告の立証負担の軽減)
 生産技術等の営業秘密を被告が不正取得したこと等を原告が立証した場合には、侵害者(被告)が「違法に取得した技術を使っていないこと」を立証できなければ損害賠償の責任を負うこととなりました。
(2)差止請求の除斥期間の延長
 営業秘密の不正使用に対する差止請求の期間制限(除斥期間)が10年→20年へと延長されました。

(※2)
経済産業省「営業秘密管理指針」(平成27年1月全部改訂)
 営業秘密の成立要件において最も重要となる「秘密管理性」を満たすためには、何をどこまでやればいいかという最低限の水準の対策を示したものです。
経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック」(平成28年2月策定)
 上記のような営業秘密の秘密管理措置について、更に具体的な対策例を紹介するものです。


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